相続放棄(その2)

司法書士のもみきです。

少し前のブログで、相続放棄について簡単にご説明させて頂きましたが、今回は相続放棄の「熟慮期間」の起算点についてご説明します。

民法第915条第1項本文では「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。」と定めているのですが、この「知った時から3箇月」のことを「熟慮期間」といって、相続人が、亡くなった方の財産(プラスもマイナスも含む。)を調査し、そのまま引き継ぐことにする(承認)か、引き継がないことにする(放棄)かを熟慮する期間が設けられています。

この「知った時から」というのは具体的にはいつからなのかということについては、いくつかの考え方があります。

1.相続開始原因覚知時説

相続人において、相続開始の原因たる事実=被相続人の死亡の事実を知った時とする説。

2.相続人覚知時説

被相続人の死亡の事実を知っただけではなく、それによって自己が相続人となったことを覚知した時とする説。

3.遺産覚知時説

相続人が相続の開始及びそれによって自己が相続人となったことを知ったことに加えて、少なくともプラスの財産の一部又はマイナスの財産の存在を知った時とする説。

例えば、多額の借金のある父親が亡くなった場合(借金があることを相続発生時点では知らなかった場合)の相続放棄の熟慮期間の起算点はそれぞれ以下のとおりとなります。
1の説→父親が亡くなったことを知った時
2の説→父親が亡くなり自分が相続人になったことを知った時
3の説→父親がなくなり自分が相続人になったことを知り、かつ、父親に多額の借金があったことを知った時

実際にどの説の考え方が当てはまるかは具体的な事案によって異なりますので、ここでご説明することはできませんが、当事務所で扱った事例についてご紹介させて頂きます。

父=A、母=B、子=Cとして、
ア)Bが亡くなった日・・・平成15年○○月○○日
イ)Bが亡くなったことをCが知った日・・・アと同日
ウ)Bが亡くなって自分が相続人であることをCが知った日・・・アと同日
エ)Bに債務があることをCが知った日・・・平成23年○○月○○日

Cが会社を起こし、事業資金の融資を受けようとして金融機関に審査を申し込んだところ、Aが経営していた会社の債務をBが連帯保証しており、Bの連帯保証債務をCも承継していることを知らされ、連帯保証債務を弁済しない限り融資を行うことはできないと言われたので相続放棄したいとのご相談でした。

1,2の説によれば、熟慮期間は8年以上前に過ぎてしまっているので相続放棄は到底認められないということになるのですが、今回は融資の審査時点で初めて上記事実を知ったということで、債権者からの催告書を添付して相続放棄の申述を行ったところ、無事に申述が受理され、事業資金の融資も認められました。
※相続放棄の申述は?から3ヶ月以内に行う必要はございます。

具体的な事情によって結論が変わることもございますが、ただ単に「3ヶ月」ということで諦めてしまわずに一度ご相談下さい。

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