家督相続
司法書士のもみきです。
相続に関わる仕事をしていて避けて通れないのが戸籍の調査。
所在不明の高齢者の戸籍が多数存在するという話があったのは昨年の夏頃だったかと思いますが、とはいえ日本では戸籍謄本が相続人を確定する絶対的な公的証明書とされております。
ところが、日頃見慣れている私たちでも、手書きの古い戸籍謄本(除籍謄本・原戸籍謄本)を見るときは目を凝らさなければならないこともありますので、一般の方は一体何が書いてあるのだろう。と思うこともあるのでは?
また、何とか判読したとしても、書かれている内容の意味が分からないということもあるのではないでしょうか?
そんな代表的なものとして『家督相続』について少しご説明してみたいと思います。
現在の民法(1947年(昭和22年)施行)では、相続は人の死亡によって開始するとなっていることはご承知のとおりかと思いますが、それ以前の旧民法(1898年(明治31年)施行)が適用されていた時代は、「戸主の死亡」以外にも、「隠居」「入夫婚姻(女戸主と婚姻してその戸籍に入ること)」など、戸主の生前にも『家督相続』が発生することがありました。
家督相続人となる者は一人とされ、直系卑属のうち親等の近い人、男と女では男、年長者と年少者では年長者が選ばれることになっておりましたので、一般的には長男が家督相続することが多かったということになります。
その他にも家督相続のルールはあるのですが、話が難しくなってしまいますのでここでは割愛させていただくとして・・・。
家督相続人は戸主の身分(地位)と財産を受け継ぐとされておりましたので、祖父・曾祖父などの名義になったままの不動産の相続登記(名義変更)をしようとして戸籍謄本(除籍謄本・原戸籍謄本)を取り寄せてみた際に、『家督相続』という言葉が出てくれば、家督相続して戸主になった人が財産も受け継いでいることになりますので、その人がその不動産の相続人と考えていただいて間違いはありません。
例えば、曾祖父に10人の子供がいて、そのうち7人が既に亡くなっていて、亡くなった子の子供が全部で27人というケースでは、現在の民法で考えると相続人は30人。
これを長男一人の名義にしようとすると、曾祖父・亡くなった曾祖父の子7名全員の出生から死亡までの戸籍謄本(除籍謄本・原戸籍謄本)を全て揃え、30人の相続人全員の戸籍謄本・印鑑証明書を揃え、遺産分割協議書に署名捺印してもらわなければなりませんので、相当の労力がかかることが容易に相続できると思います。
ところが、戸籍謄本を取り寄せてみて、長男が曾祖父を家督相続したという記載があれば、他の9人の子や亡くなった7人の子の子供(孫)の相続権を考慮する必要がなくなります。
もちろん現行民法が適用されてからさらに相続が開始している場合には現行民法に沿って相続人を確定しなければならないのですが、相続の手続きが大変だろうと、長い間相続登記(名義変更)をしていない不動産を持ってらっしゃる方は一度確認されてみてはいかがでしょうか。
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